雲雀短編

□君だからに決まってる
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「僕の退屈しのぎにゲームに参加しなよ」

「………ゲーム…ですか?」

「ルールは簡単、
今日1日僕に捕まらずに過ごせたら遅刻は見逃してあげる」

「……本当ですか!?」

「ただし、
捕まったら僕の言うことをなんでも聞かなきゃ噛み殺す」

「……なんでもって…例えば何ですか…?」

「それはこれから考えておくよ」





そんなやりとりを、
今朝から何度頭の中で繰り返し再生したかな。

遅刻してきた私に課された、
一方的な雲雀さんの提案。

その恐怖に怯えて、

私の頭の中は今日1日四六時中あなたに支配されてたと思う。


下校時間を知らせるチャイムが鳴って、
玄関目掛けて全速力で駆け出した廊下は夕日に赤く染められていて、

血の色にも似たそれは雲雀さんへの恐怖を一層引き立たせてくれた気がした。

おかげで駆ける脚は体育の授業で走るよりずっと早くて、
これならもしかしたら切り抜けられるかもしれないと少しだけ胸が躍った。

多分これが火事場の馬鹿力ってやつ。


あと少し、

もうすぐ玄関。

そこを抜ければ、

ゲームは終わり。



だけど、








「捕まえた」









颯爽と過ぎてた景色はガクンと止まる。

分かってた、
そんなに上手くいくわけないって。

あなたから逃げられるわけがないって。






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